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第111話 冷え切った食卓①

Author: 花柳響
last update publish date: 2026-01-28 18:00:29

 あの日から、屋敷に流れる時間は凍りついたままだった。

 窓の外では、季節外れの長雨がしとしとと降り続いている。

 湿った空気が隙間という隙間から入り込み、屋敷全体を覆う重苦しい沈黙を、さらに粘り気のあるものへと変えていた。

 夜の七時。

 ダイニングルームには、カチャリ、カチャリと、銀の食器が触れ合う乾いた音だけが響いている。

 広すぎるマホガニーのテーブル。

 その端と端に、私と征也は座っていた。

 かつては、彼が私の隣に椅子を引き寄せ、膝が触れ合うほどの距離で食事をしていた場所だ。

 けれど今は、物理的な距離以上に、果てしない断絶が二人の間に横たわっている。

「……」

 私は皿の上に載せられた白身魚のポワレを、フォークの先で小さく崩すことしかできなかった。

 喉の奥が詰まって、固形物を受けつけない。

 おそるおそる視線を上げると、テーブルの向こうに座る征也の姿が目に入った。

 彼は、食事に手をつけていなかった。
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  • 没落令嬢の家政婦契約 ~冷酷CEOは、初恋を逃さない~   第113話 冷え切った食卓③

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